森沈しんちん)” の例文
夜は森沈しんちんと更け沈み、赤い蝋燭ろうそくの灯にみちびかれて、魔王のごとき影がゆらゆら室の外まできたらしいのも、彼は全然知らなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度、深夜よりも森沈しんちんと、暗くものすごく、夜気のる一刻があるという。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そっと、李逵が法院窓の障子に舌で穴をあけて内を覗いてみると、なんと、この森沈しんちんたる深夜なのに、羅真人はなお、椅子いすに端座したままであり、くち玉枢宝経ぎょくすうほうきょうを小声でしているていなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜は森沈しんちんとして闇黒の色を深めてゆくだけで、樹々の影もこんもりと黒く狭霧さぎりがおりているのか、あんどんの余映を受けてぼやけた空気が、こめるともなく漂っているきり——いつも見慣れた
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)