有明月ありあけづき)” の例文
雨あがりの上天気で、きょうもさぞ暑くなりそうな、雲ひとつないあけぼのの空に、有明月ありあけづきが残っている。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ちょうどそのころ薫中将は、長く宇治へ伺わないことを思って、その晩の有明月ありあけづきの上り出した時刻から微行しのびで、従者たちをも簡単な人数にして八の宮をお訪ねしようとした。
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「思い切ったる死に狂い見よ」「青天に有明月ありあけづきの朝ぼらけ」と付けたモンタージュと、放免状を突きつけられた囚人の画像の次に「春の雪解け川」を出した付け合わせと、情は別でも
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから昨夜ゆうべの、その月の射す窓からそっと出て、瓦屋根かわらやねへ下りると、夕顔の葉のからんだ中へ、梯子はしごが隠して掛けてあった。つたわって庭へ出て、裏木戸の鍵をがらりと開けて出ると、有明月ありあけづきの山のすそ
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
有明月ありあけづきもうすれゆくいなのめ
薫はそれに続いてあの琵琶びわと琴の合奏されていた夜の有明月ありあけづき隙見すきみをした時のことを言い
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
青天に有明月ありあけづきの朝ぼらけ
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
死はそうしたものであるが、さきに一人の愛人を死なせただけの経験よりない源氏は今また非常な哀感を得たのである。八月の二十日過ぎの有明月ありあけづきのあるころで、空の色も身にしむのである。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)