暁天ぎょうてん)” の例文
旧字:曉天
西行のような出家こそ、出家の真実を意味するものだろうが、あれまでの真実に徹しようとした者は、暁天ぎょうてんほしといってよい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな人格が暁天ぎょうてんの星の如く稀であるべきは、元よりいうまでもない。それ丈けそう言った人格は尊い。友よ、落ついた、熱心な、そして誠実な哲学者の心をもって心とせよ。
慶応二年の春とは名だけ、細い雨脚が針と光って今にも白く固まろうとする朝寒、雪意せついしきりに催せば暁天ぎょうてんまさにくらしとでも言いたいたたずまい、正月事納ことおさめの日というから二月の八日であった。
しだいに万燈会まんどうえのごとくおびたゞしい数になりまして、ひでよし公が大柿おおがきより夜どおしでお馬をかえされたらしく、廿一日の暁天ぎょうてんにあたって余吾よごのみずうみのかなたがにわかにさわがしく相成あいなり
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうはいったが、暁天ぎょうてんの光を見たなら、ふもとから孫兵衛や有村が、原士の新手あらてをすぐって、ここへせてくることは分っていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このぎょうを、彼は、暁天ぎょうてんから夕べまで、また、よいから深夜まで、一日何百回、行の熟達につれて、何千回もくり返して行った。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いって直ぐ、かぶとの緒をしめながら表方へ走った。ぽう——と、まだ暗い暁天ぎょうてんに、出陣の貝は鳴り出していた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊那丸いなまるせま暗黒あんこくから暁天ぎょうてんへみちびかれて、自分のしんにゆくべき道をおしえられたような心地ここちがした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこし身を横にかがませて、暁天ぎょうてんやみをすかしたふたりは、なるほど、よくよくひとみをこらして見ると、忍剣のいうとおり楼閣ろうかくの三階目に、うす黒い影が立っているような気がした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、きょうの暁天ぎょうてんから、源氏の運勢があらたまるような思いを誰も抱いていたのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暁天ぎょうてん
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)