旱天かんてん)” の例文
ところが、あいにくな旱天かんてんつづき。大夏の太陽は火龍かりょうというもおろかである。満天すべて熱玻璃ねつはりのごとく、今日も一片の雲さえ見あたらない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折からの旱天かんてんにもげず、満々たる豊かさをひびかせて、富士の裾野のいかにも水々しい若さを鮮やかに印象している。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
博士が燻製にあこがれること、実に、旱天かんてん慈雨じうを待つの想いであった。秘書は、びっくりして、引込ひっこんだ。
彼の芸術を惜しむ人々に旱天かんてん慈雨じうのような喜びを与えたが、それから四年を経た一八九〇年に、さらに彫心鏤骨ちょうしんるごつの苦心の余になる力作を発表して世を驚かした。
六時半、赤沢ノ小屋を見舞う、此処は昨今の旱天かんてん続きで容易に水を得られぬから、宿泊出来ぬそうだ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
きくだに妖艶ようえん、その面影もさながらに彷彿ほうふつできるへび使いの美人行者、そもなんの目的をもって三人の小町娘をさらい去ったか、疑問はただその一点! 日は旱天かんてん、駕籠は韋駄天いだてん
またさきほどおはなししたように、や、苔類こけるいみづおほふくみ、したがつて、地中ちちゆうにも多量たりよう水分すいぶんをしみこませますから、たとひ旱天かんてんひさしくつゞいても森林しんりんはそのたもつてゐる水分すいぶん徐々じよ/\なが
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いかなる旱天かんてんにもれたことがないというのである。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このときの陸遜の顔はちょうど旱天かんてんに雨雲を見たように、何ともいえぬ歓びを明るい眉にあらわしていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旱天かんてんに慈雨——猿楽の日の夕立のように——雲上人たちは、息をついた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)