擁立ようりつ)” の例文
暮夜ぼやひそかに大垣の城下に戸田侯(内匠頭の従弟じゅうてい戸田采女正氏定とだうねめのしょううじさだ)老職の門を叩いて、大学擁立ようりつのことを依嘱いしょくした事実もある。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
信雄とすれば、自分をさしいて、弟の信孝が跡目に立つよりはまだ、三法師が擁立ようりつされるを望んでいるであろうことはいうまでもあるまい。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔悝の名において新衛侯擁立ようりつの宣言があるからとて急に呼び集められた群臣である。皆それぞれに驚愕きょうがく困惑こんわくとの表情をかべ、向背こうはいに迷うもののごとく見える。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
(一)王水険博士おうすいけんはかせ擁立ようりつし、金博士を牽制けんせいするとともに、必要に応じて、金博士をおびき出すこと。
そこで彼等は天皇の擁立ようりつを自分勝手にやりながら、天皇の前にぬかずき、自分がぬかずくことによって天皇の尊厳を人民に強要し、その尊厳を利用して号令していた。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
信長入洛じゅらくの事、聞き及ぶが如く也。将軍を擁立ようりつし、四民を欺瞞ぎまんせんとするも、政事まつりごとわたくしし、その暴虐ぼうぎゃくぶりは、日をうておおがたいものがある。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「願わくば自分に精兵五千を授け給え。直ちに禁門に入って、新帝を擁立ようりつし奉り、多年禁廷に巣くう内官どもをことごとく誅滅ちゅうめつして見せましょう」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも藤原氏の悪い外戚がいせき政策をならったものと思われるが——わが妻の妹、建春門院からいでました高倉天皇を擁立ようりつし奉って、その高倉天皇の中宮に、じょの徳子をれ、ここに臣下でありながら
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに帝王や将軍の一世が擁立ようりつされ、或る期間の最盛時代が現出する。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、その信孝擁立ようりつの競争者は、誰もが、信雄であると信じていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)