そう)” の例文
……のみならず、こんな皇室の在り方も正し、王政を延喜えんぎ天暦てんりゃくの古制にかえして、鎌倉のごとき醜武者しこむしゃの府は、これを一そうせねばならぬ
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
され共東天やうやく白く夜光全くり、清冷の水は俗界のちりを去り黛緑たいりよくの山はえみふくんて迎ふるを見れば、勇気いうき勃然ぼつぜん為めに過去の辛苦しんくを一そうせしむ。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
つ人といえばとかく外部の敵に勝つように思わるるが、その外に障害物を一そうする人、もしくは破壊はかいする人と思われる。また野蛮人やばんじんの社会においては、破壊する人が一番の強者として尊敬される。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
六波羅一そうの後、おのれ六波羅奉行ととなえ、御教書みぎょうしょなどを布令ふれだし、かずかずの越権、目にあまるものがある。——その足利こそ油断ならぬ者だ。
「なにも鞍馬とはかぎらん。都の内でも時々には、塵芥焼あくたやきをする必要がある。王政の敵を一そうする火と血の祭りだ。夜半すぎ、六波羅の方を見ておれ」
柳営りゅうえいに仕官の望みを絶って、伝奏でんそうやしきの半双はんそう屏風びょうぶに、武蔵野之図を一そうに描き残したまま、江戸の地を去った武蔵は、あれからどう道どりを取って来たか。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などのはいは、いわゆる朝恩にれて、みだりに、官職の栄を争う醜悪な輩と共に、すべて一そうしなければならないと断じ、時代の悪を、痛嘆しているものだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多少の思いは、皆、真っ黒な墨にこめて、白紙の上へ、一そうの水墨画として吐いてしまった感じである。——その画もわれながら、今朝は気もちよく描けたと思う。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城内の一そうが終ると、彼はただちに“布告文”を辻に立てた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)