手遊おもちゃ)” の例文
日あたりの納戸に据えた枕蚊帳まくらがやあおき中に、昼の蛍の光なく、すやすやと寐入ねいっているが、可愛らしさは四辺あたりにこぼれた、畳も、縁も、手遊おもちゃ玩弄物おもちゃ
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「オイなぜ消すんだ灯を。提灯は住吉踊やあとこせ手遊おもちゃじゃねえ、揺って面白えって代物じゃねえんだ」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
僕のたましいの生み出した真珠のような未成品の感情を君はとっ手遊おもちゃにして空中になげうったのだ。
愛する形式と、感情の変った手遊おもちゃが、妾には、一つ増えたわけね。——そういえば——どういったらいいんでしょう。確かに、可愛いいわ。妾の意思がそのままに通じるでしょう。
ロボットとベッドの重量 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
もしそう云う考えの加わった施行なら人間の真情がみだされた施行で、施す人も施される人も共にけがすというものです。真率であるべき人生の行為を、戯論けろん手遊おもちゃにするというものです。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
金目かねめのものではあるまいけれども、紅糸べにいとで底をゆわえた手遊おもちゃ猪口ちょくや、金米糖こんぺいとうつぼ一つも、馬でき、駕籠かごかかえて、長い旅路を江戸から持って行ったと思えば、千代紙ちよがみの小箱に入った南京砂なんきんずな
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海松みるばかり打上げられる、寂しい秋の晩方なんざ、誰の発議だったか、小児が、あの手遊おもちゃのバケツを振提ぶらさげると、近所の八百屋へ交渉して、豌豆豆えんどうまめを二三合……お三どんが風呂敷で提げたもんです。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)