たのし)” の例文
姉がヴァイオリンをいてともたのしんだある夏の夕暮だったが、いま姉も一緒につれてここをこうして旅したなら、どんなことを姉は云い出すだろうと空想したりした。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ほかの参観人は将棋の専門家、又は、好棋家で、棋譜をたのしむ人たちであるから、控室で指手を研究してたのしんでゐるが、私は将棋はヘタクソだから、さうは、いかない。
勝負師 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
二度目の二年生の授業が始まると、私は何といふ事もなく学校に行くのがたのしくなつて、今迄は飽きて/\仕方のなかつた五十分づつの授業が、他愛もなく過ぎて了ふ様になつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それより照子、鬱々うつうつとしてたのしまず、愁眉しゅうび容易に開けざるにぞ、在原夫人はことばを尽して、すかしても、慰めても頭痛がするとて額をおさえ、弱果てて見えたまえば、見るに見かねて侍女等こしもとども
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
深沢は、それとなく後をつけて来たのか、或は、レールに横たわった京子の死骸に、恋する者の素早い直感で、源吉の計画をさとったのだろう。そして、京子との不思議な、たのしき心中……
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
日日たのしみとなつたのである。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
二度目の二年生の授業が始まると、私は何といふ事もなく學校に行くのがたのしくなつて、今迄では飽きて/\仕方のなかつた五十分宛の授業が、他愛もなく過ぎて了ふ樣になつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)