悪感おかん)” の例文
旧字:惡感
この三名を見ると、克子はなんとなく悪感おかんを覚えた。とは云え、二人の男は立派な大紳士である。須和康人は鉱山業者で大金満家。
名状しがたい悪感おかんが、全身を伝わり、手足がわなわなと震えた。彼は、知らずに毒を含んだ人のように、口中のつばを吐き出したかった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
昨夕は悪感おかん発熱して、ひとしきり寝苦しかった。修治さんもおこたにのぼせて発汗。おねまきを更え、湯たんぽをとり替える。
私は全身に伝わる悪感おかんを奥歯で噛み締めながら、なおもワイワイと痙攣する両手の指で、青い風呂敷包みを引き拡げた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
外ではしきりに悪感おかんがした。舌が重々しくぱさついて、熱のある人のように身体全体が倦怠けたるかった。彼は自分の脈を取って見て、その早いのに驚ろいた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いわば眼中に置かぬあしらい方であることが不愉快だと、村正氏もその途端に相応にそれに悪感おかんを催したのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悪感おかんの覚えられることである、どういうわけであろう、好色なお心であるから、小さい時から手もとで育たなかった娘にはああした心も起こるのであろう
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼はたまらない悪感おかんを感じながらも、不思議にその予言に支配されるような気がしてならなかった。
機が突っ切っている時分から悪感おかんがして、なんとなく身体がゾクゾクするので、一人で本を読んでいるのを見ると、東京はどこに泊ってるのだ? と、公使が聞かれました。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その内に筑波颪つくばおろしがだんだん寒さを加え出すと、求馬は風邪かぜが元になって、時々熱がたかぶるようになった。が、彼は悪感おかんを冒しても、やはり日毎に荷を負うて、あきないに出る事を止めなかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は自身の痛ましい愚かさに打たれると、悪感おかんを感じて身が慄えた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そして、全身ぜんしん悪感おかんかんずるのでありました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことに二三十分前、京子からその人の話を、きかされていただけに、倭文子は、はげしいショックを受け、身体中が不快な悪感おかんのためにふるえた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あさましいなどという言葉では言い足りない悪感おかんを源氏は覚えた。女房たちが近く寄って来る気配けはいにも、源氏はそれを見現わされはせぬかと胸がとどろいた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お銀様は、悪女の文字から来る不快と悪感おかんとをこらえて、そのことは竜之助に向って一言も言いません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
如何に人間の弱点を書いたものでも、その弱点の全体を読む内に何処いずこにかこれに対する悪感おかんとか、あるいは別に倫理的の要求とかが読者の心にづるような文学でなければならぬ。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何時いつもは、夫の帰るのを考えると、妙に身体からだが、引きしまってムラ/\とした悪感おかんが、胸をいて起るのであったが、今宵に限っては、不思議に夫の帰るのが待たれた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と両手をすりすりさいく時の呪文じゅもんを早口に唱えているのに悪感おかんを覚えながらも大臣は従って来た人たちの人払いの声を手で制して、なおも妻戸の細目に開いたすきから
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尼になってもこんな美しい人は決して愛人にして悪感おかんの起こるものではあるまい、かえって心が強くかれることになるであろう、極秘裡ごくひりにやはりあの人を自分のものにしようと
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は悪感おかんを覚えて
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)