応答うけこたえ)” の例文
旧字:應答
笹村はくすぐったいような心持で、それに応答うけこたえをしていた。そして母親の土産に持って来た果物の罐詰を開けて試みなどしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
刺身は調味つまのみになッておくび応答うけこたえをするころになッて、お政は、例の所へでも往きたくなッたか、ふとッて坐舗ざしきを出た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
離れの隠居部屋に居る父親の専左衛門は、六十を越した老人で、何を聞いても応答うけこたえの出来ないほど老耄もうろくしておりました。
……後で聞くと、中には、対方あいてこしらえて応答うけこたえをする、子爵その人が、悪戯をしているんだ、と思ったのもあったんだ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お島が、大秀へ電話をかけたとき、出て来て応答うけこたえをしたのは、おゆうには継母にあたる大秀の若い内儀かみさんであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ふむ、」と心あるかしらは返事まで物々しい。ちと応答うけこたえを仰山にされたので、源次は急にきまりが悪そう。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お銀はいつもの揶揄面からかいづらとまるで違ったような調子で、時々応答うけこたえをするのであったが、今の場合双方にその方法のつけ方のないことは、よく解っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ぴたりと後手うしろでにその後を閉めたあとを、もの言わぬ応答うけこたえにちょっと振返って見て、そのまま片手に茶道具を盆ごと据えて立直って、すらりと蹴出けだしのくれないに、明石の裾をいた姿は
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お増は愛想らしく答えたが、よく男にでたらめな話の応答うけこたえなどの出来た以前の自分に比べると、こうした見知らぬ男などと口を利くのが不思議なほど億劫おっくうであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ふむふむ。」と、浅井は莨をふかしながら、少しずつほぐれて来るお今の話に、気軽な応答うけこたえをしていたが、じきに目蓋まぶたの重そうな顔をして、二階へ引き揚げて行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そんなことには何の意見もはさまないお芳は、時々顔をあからめて、お増の話に応答うけこたえをしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「え、何だかそんな話ですけれどもね。」という風に、女も応答うけこたえをしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
磯野との関係を深くも知らないこの母子の前で、お庄は応答うけこたえのしようもなかった。まとまって何一つしつけられたことのない体で、そんな母子のなかへ入って、日が暮せそうにも思えなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)