御曹司おんぞうし)” の例文
右近将監うこんしょうげん様の御曹司おんぞうし、風流洒落の貴公子として、おとなしく殿がおわすなら、私も京伝や蜀山人の伴侶、雅号蝸牛の舎の貝十郎として
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ついでに、脇差のこうがいをぬらし、びんの乱れをなでつけて、紋を直した落着きは、こんな場合にも、さすが尾張の御曹司おんぞうしです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私の一存ではどうもなりませぬ、九郎御曹司おんぞうしに伺いを立てました上で」
まず紀州様の御曹司おんぞうし、萩丸様を取り返し、明暦義党の謀叛人どもを、一人のこらず討ってとれと、一万にあまる大兵を出し……
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おしろちかくをうろついているとは、不敵なやつ。尋常にせねばなわをうつぞ、甲斐源氏かいげんじ御曹司おんぞうし縄目なわめを、はじとおもわば、神妙しんみょうにあるきたまえ——」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虫部屋の恐怖が十八歳の、貴族の御曹司おんぞうしをそうさせたので、その萩丸の痴呆状態は、菊女達義党の人々にとっては、しかし勿怪もっけの幸いであった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どうっと、転び落ちる土煙とともに、袁紹以下、旗下はたもと達も、声をあわせて、御曹司おんぞうし袁尚の手柄をどっと賞めたたえた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高ノ御曹司おんぞうしとは、つまりその人の養子なのだ。もとは高家の叔父、高三郎の子であるが、貰われて、時めく近衛大将軍家の公達きんだちとはなったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴族の御曹司おんぞうしの一本気と、世間知らずのわがままと、若さから来る直情とで、萩丸はこう云うとヒョロヒョロした体で、立ち上がって部屋を出ようとした。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「されば、それがしの主君勝家より密命があって、ご不運なる武田家たけだけ御曹司おんぞうしへ、ひとつのおくり物をいたそうがため」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それそいつがよくない洒落しゃれだ。かりにも観世の御曹司おんぞうしが、地口を語るとは不似合だな」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主人勝家かついえこそははるかに御曹司おんぞうしのおうえをあんじている、無二のお味方、人穴城ひとあなじょうをお手にいれたあかつきは、およばずながらよしみをつうじて、ご若年じゃくねんのおすえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに相手が奇矯におわす、名門の御曹司おんぞうしであろうとも、素姓も知れず事情も解らない、一面識のそんな女を、送って行けといわれたところで、おいそれと引き受けることは出来なかった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
遠目に見てもまばゆいばかりな扮装いでたちは、いうまでもなく曹家の御曹司おんぞうし曹彰そうしょうにちがいはない。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは貴族の御曹司おんぞうしであり、貴族趣味から遁がれられないところの、冬次郎にとっては前代未聞の恥辱、いうにいわれぬ忿懣ふんまんとなって、貝十郎に対し公憤以外、私怨を感ぜざるを得なかった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると曹丕そうひの随臣は、「御曹司おんぞうしのお顔を知らんか」と、あべこべに叱りとばした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴族の御曹司おんぞうしたる彼としては、まさに破格の生活であった。難行苦行の生活であった。食物にも不足した。着る物にも不足した。吹雪は用捨ようしゃなく吹き込んで来た。しかも十分の燃料さえない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾張中将の御曹司おんぞうし——徳川家の門葉六十万石の気位は、時と場所と自身の変装とを忘れしめて、投げつけられた不浄道具に、かッと、若殿らしいいきどおりの大喝を、袋地の隅へゆるがせました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ナニ、冷泉卿の姫君とな。……ふうむこいつは驚いたな。……飛鳥井家の御曹司おんぞうしに冷泉家の姫か、嘘にしても大したもの、もし本当なら捨てては置けない。ともかくも城内へ請じ入れるよう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あけろ、わしじゃ、大弥太じゃ! ……御曹司おんぞうし様のご帰館じゃ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その御曹司おんぞうしのことゆえ、さだめし義朝が先になって
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何しろ変った御曹司おんぞうしですよ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴族の御曹司おんぞうしに相違ない。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御曹司おんぞうし、耳はないのか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)