御影みえい)” の例文
門徒へ宗旨替しゅうしがえをして、帝釈様たいしゃくさまのお掛地かけじを川へ流すやら、七面様の御影みえいを釜の下へ入れて焼くやら、大騒ぎをした事があるそうである。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて、『君が代』の歌の中に、校長は御影みえいを奉開して、それから勅語を朗読した。万歳、万歳と人々の唱へる声はらいのやうに響き渡る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
文字はこれを読みうる人があって始めて有用になるのだが、それよりもさらに必要だったのは阿弥陀あみださまの御影みえい、ないしは六字の御名号みょうごうである。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鬼子母神きしもじん御影みえいが見えたでしゅで、蛸遁たこにげで、岩を吸い、吸い、色を変じて磯へ上った。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「秀頼公のその御書ごしょは、太閤さまの御影みえいと思えとて、大坂城のあるお方より、わざわざ下された物とて、粗末にもならず、かかげてはおきまするが……すでに太閤さまも亡き今日では」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神君しんくん御帰依ごきえ摩利支尊天まりしそんてん御影みえいをお仕立になる時、此のきれもってお仕立になり、それを拝領した旗下はたもとが有って、其の切を私方わたくしかたで得てこしらえた萠黄金襴の守袋で、此れを金入にしては済まん訳だが
母の枕もとの盆の上には、大神宮や氏神うじがみ御札おふだが、柴又しばまた帝釈たいしゃく御影みえいなぞと一しょに、並べ切れないほど並べてある。——母は上眼うわめにその盆を見ながら、あえぐように切れ切れな返事をした。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
浅草の中見世なかみせで買って来たお多福の人形が飾って有り、唐戸からどを開けると、印度物いんどもの観世音かんのんの像に青磁の香炉があるというのでなし、摩利支天様の御影みえいが掛けて有り、此方こっちには金比羅様のお礼お狸さま
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)