弾痕だんこん)” の例文
「敵の計画では、焼夷弾しょういだん毒瓦斯弾どくガスだんとで一気に、帝都を撲滅ぼくめつするつもりだったらしいですな。爆弾は、割にすくない。弾痕だんこんと被害程度とを比較して、判ります」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……伊東はその朝、検視の折、武太郎の無残に切断された右大腿部だいたいぶの内側に銃砲による弾痕だんこんひそかに発見して、急に口をつぐんでしまったことを思い合わせた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
水島生みずしませいが来た。社会主義しゃかいしゅぎ神髄しんずいを返えし、大英遊記だいえいゆうきを借りて往った。林の中でひろったと云って、弾痕だんこんあるつぐみを一持て来た。食う気になれぬので、楓の下に埋葬まいそう
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
バスは、天井に大きな弾痕だんこんのあるロシヤ軍の将校集会所を振りだしに、山へ登つて、坦々たんたんたるドライヴ・ウェイを上下しながら、主防備線づたひにぐるぐるめぐつて行く。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
氷を弾丸の形にけずって、銃器に装填そうてんし、手早く発射する方法がある。鋭い氷片は被害者の体内に入り、弾痕だんこんを残すが解剖しても弾丸は発見されない。体内でとけてしまうからだ。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一番左端の上の弾痕だんこんから、その下の、六十センチほどへだてて、少し右へ寄つた弾痕へ、斜にスツと一本の線をひき、更に今度はその点から、逆に上の方へ、最初の弾痕の右の方に三十糎ほどはなれて
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「とにかく、遥か後方から放ったのだ。見給え、この弾痕だんこんを。弾丸たまは撃ちこんだ儘で、外へは抜けていない。背後近くで撃てば、こんな柔かいくびの辺なら、弾丸たまがつきぬけるだろう」
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
弾痕だんこんや弾丸から、われわれが何処の国籍の人間か、すぐ判断されてしまう」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)