幽静しずか)” の例文
旧字:幽靜
涼しき真夜中の幽静しずかなるを喜びつつ、福井の金主が待てる旅宿におもむかんとて、そこまで来たりけるに、ばらばらと小蔭よりおどり出ずる人数にんずあり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
畠を作ったり、鶏を飼ったりした八年間の田園生活、奈何どんなにそれが原の身にとって、閑散のんきで、幽静しずかで、楽しかったろう。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
土塀どべいに近く咲いた紫と、林檎りんごの根のところに蹲踞うずくまったような白とが、互に映り合て、何となくこの屋根の下を幽静しずか棲居すまいらしく見せた。土塀の外にもカチャカチャなべを洗う音などがした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)