布地ぬのじ)” の例文
くびつりだいにのぼったどろぼうのようにな。おまえは指を長くして、ひとの布地ぬのじをはさみとったではないか。おまえは、天国てんごくにはいれはしない。
花聟の衣裳は磨り切れて艶々しい色もせ、荒野の悪い野良犬や尖ったいばらにその柔らかな布地ぬのじは引き裂かれてしまった。
さながらおせんがってきた、貝細工かいざいくのように、ぎんのかんざしのように、あかきぬひろげたように、淡紅色うすべにいろ布地ぬのじるように、それらのものをみんな大空おおぞらかっていたように……。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
バラバラと飛んでゆく弾丸は、黒いモーニングの上にたちまち白い弾丸跡たまあともなくつづってゆくのでした。とうとう洋服の布地ぬのじの一部がボロボロになって、銃火じゅうかに吹きとばされました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
織りかけてある男物の布地ぬのじが、はたにかけられてあった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)