市中しちゆう)” の例文
農家のうか市中しちゆう正月の行事ぎやうじ鳥追とりおひといふ事あり。此事諸国にもあれば、其なす処其国によりてさま/″\なる事は諸書しよ/\散見さんけんせり。
然し渡船わたしぶねは時間の消費をいとはず重い風呂敷包ふろしきづゝみなぞ背負せおつてテク/\と市中しちゆうを歩いてゐる者供ものどもにはだいなる休息を与へ
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
跡部あとべ大筒方おほづゝかたの首を斬らせて、鑓先やりさきつらぬかせ、市中しちゆうを持ち歩かせた。後にこの戦死した唯一のさむらひが、途中から大塩の同勢どうぜいに加はつた浪人梅田だと云ふことが知れた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
去年の夏、その頃住んでゐた、市中しちゆうの一日中陽差の落ちて来ないわがの庭に、一茎ひとくきの朝顔が生ひ出でたが、その花は、夕の来るまで凋むことを知らず咲きつづけて、私を悲しませた。その時の歌
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
農家のうか市中しちゆう正月の行事ぎやうじ鳥追とりおひといふ事あり。此事諸国にもあれば、其なす処其国によりてさま/″\なる事は諸書しよ/\散見さんけんせり。
堀割の岸には処々しよ/\物揚場ものあげばがある。市中しちゆうの生活に興味を持つものには物揚場ものあげばの光景もまたしばし杖をとゞむるに足りる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
東京の蝉とは全く違つた鳴声なきごゑの蝉が、夕立の降つてくるやうに市中しちゆう到る所の樹木に鳴いてゐた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其江戸の元日をきけ縉紳朱門しんしんしゆもんことはしらず、市中しちゆうは千もん千歳ちとせの松をかざり、すぐなる 御代みよの竹をたて、太平の七五三しめを引たるに、新年しんねん賀客れいしや麻上下のかたをつらねて往来ゆきゝするに万歳もうちまじりつ。
始めて東京へ出て来た地方の人は、電車の乗換場のりかへばを間違へたり市中しちゆうの道に迷つたりした腹立はらだちまぎれ、かゝる地名の虚偽を以てこれまた都会の憎むべき悪風として観察するかも知れない。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其江戸の元日をきけ縉紳朱門しんしんしゆもんことはしらず、市中しちゆうは千もん千歳ちとせの松をかざり、すぐなる 御代みよの竹をたて、太平の七五三しめを引たるに、新年しんねん賀客れいしや麻上下のかたをつらねて往来ゆきゝするに万歳もうちまじりつ。
上代の宮裏きうり近古きんこ市中しちゆう粥杖かゆつゑの事をあげて、考証かうしやうはなはだつまびらかなり。
上代の宮裏きうり近古きんこ市中しちゆう粥杖かゆつゑの事をあげて、考証かうしやうはなはだつまびらかなり。