巾着切きんちゃくき)” の例文
「解ったよ。三百八十両の大金を巾着切きんちゃくきりにやられて、主人への申し訳、言い交した女と一緒に、ドブンとやらかそうという筋だろう」
巾着切きんちゃくきりというやつがいる、人が井戸ん中へ入ってる時でもなんでもかまあずに、人の物を盗るような火事場泥棒がいる
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「風来坊の乞食の無頼漢ならずもののろくでなしの極道ごくどうの傴僂野郎め、巾着切きんちゃくきりの矢尻切りの嘘つきの恥知らずのはりつけ野郎め、おまけに」「お父さま、——」
十の年には、立派な巾着切きんちゃくきりさ。それから知合いもできてきた。十七の頃には、立派などろちゃんだ。店を破り、錠をねじあける。とうとうつかまった。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
巾着切きんちゃくきりの用心に財布せえふをにぎってばかりいねえでサ、その財布せえふのひもを、ちっとといたらどんなもんだい
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「悪党だって、絵の上手なのも居るし、家で盆栽ぼんさいをいじっている奴もある。現に、木鼠きねずみの三公なんかは、巾着切きんちゃくきりは下手へただが、伝馬牢へ入ると、時々、句を作って出てくるそうだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むやみに巾着切きんちゃくきりのようにこせこせしたり物珍らしそうにじろじろ人の顔なんどを見るのは下品となっている。ことに婦人なぞは後ろをふりかえって見るのも品が悪いとなっている。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
巾着切きんちゃくきりから、女白浪——長崎で役を勤めるようになってからは、紅毛碧眼こうもうへきがん和蘭オランダ葡萄牙ポルトガル人、顔色の青白い背の高い唐人から、呂宋ルソン人まで善悪正邪にかかわらず、およそありとあらゆる
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「そうじゃアない巾着切きんちゃくきりだと」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
巾着切きんちゃくきり上がりの弟子の滝松というのを使って、近所でかっ払い、こそ泥、誘拐かどわかしを働かせ、そのった物やさらった子供を隠しておいて、人相や占いの客が来ると
日本は巾着切きんちゃくきりの態度で美術品を作る。西洋は大きくてこまかくて、そうしてどこまでも娑婆気しゃばっけがとれない。まずこう考えながら席に着く。若い男は余とならんで、花毯のなかばを占領した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「すると巾着切きんちゃくきりで? それともちぼ……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「やいやいやい、馬鹿な事をすると勘弁しねえぞ、女巾着切きんちゃくきりを捕まえたんだ、これが見えねえか」
「ハッハッハッ、巾着切きんちゃくきりにやられたよ、江戸者も旅に出ちゃ、からだらしがねえ」