なだ)” の例文
その雪持ちの森々しんしんたる樹立こだちは互いに枝を重ね合い段々たる層を形成かたちづくって底に向かってなだれている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ああ東京の街! 右から左から、刻一刻に滿干さしひきする人の潮! 三方から電車と人がなだれて來る三丁目の喧囂さはがしさは、さながら今にも戰が始りさうだ。お定はもう一歩も前に進みかねた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其中そのなかに遠い心持のするがある。たかい雲がそらの奥にゐて容易に動かない。けれども動かずにも居られない。たゞなだれる様に動く。女が三四郎を見た時は、かう云ふ眼付であつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鍬を手にした佐吉らのかける土はなだれ落ちるように棺のふたを打った。おまんから孫の正己までが投げ入れる一塊ひとくれずつの土と共に、親しいものは寄り集まって深く深く吉左衛門を埋めた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
閃めく掻爪かきづめいらちを、巻きなだれて
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あゝ東京の街! 右から左から、刻一刻に満干さしひきする人のうしほ! 三方から電車と人とがなだれて来る三丁目の喧囂けんかうは、さながら今にも戦が始りさうだ。お定はもう一歩も前に進みかねた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
忽ち入り乱れる足音が邸の四方から聞こえて来たが、庭の方へなだれて行く。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
閃めく掻爪かきづめいらちを、卷きなだれて
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
須田町——東京中の電車と人が四方からなだれる様に集つて来る須田町を頭脳あたまに描くが、アノ雑沓の中で、菊池君が電車から降りる……否、乗る所を、私は余程よつぽど遠くからチラリと後姿を……無理だ
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼らは家の中へなだれ込んだ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なだれうつ浪の穂を見よ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)