尖端とっさき)” の例文
片手で袖をつかんだ時、布子の裾のこわばった尖端とっさきがくるりとねて、ばばあの尻が片隅へ暗くかくれた。かまどの火は、炎を潜めて、一時いっときに皆消えた。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と松山が大声で叫んだので、みると、指の尖端とっさきを口中に入れてめていた。なにか乱暴なことをやったものらしい。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
幌が少し破れて、雨がぽたり/\と漏ります。梶棒の尖端とっさきを持ってがた/\ゆるがせて、建部の屋敷裏手までまいると、藤川庄三郎曲り角の所から突然だしぬけ車夫しゃふの提灯を切って落した。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぶくりと黄色い大面おおづらのちょんびり眉が、女房の古らしい、汚れた半帕ハンケチを首に巻いたのが、鼠色の兵子帯へこおびで、ヌーと出ると、ひねってもねじっても、めじりと一所に垂れ下る髯の尖端とっさきを、グイと
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)