射込いこ)” の例文
横に落した紫の傘には、あの紫苑しおんに来る、黄金色こがねいろの昆虫のつばさの如き、煌々きらきらした日の光が射込いこんで、草に輝くばかりに見える。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それをお浪が知っていようはずは無いが、雁坂を越えて云々しかじかと云いあてられたので、突然いきなりするどい矢を胸の真正中まっただなか射込いこまれたような気がして驚いたのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といって、れいつよゆみながをつがえて、まっさきすすんだ大きなふね胴腹どうばらをめがけて射込いこみました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ヂュリ さア、いてもませう、かるゝものなら。とはいへ、わたしの矢頃やごろは、はゝさまのおゆるしをばかぎりにして、それよりきつうは射込いこまぬやうにいたしませう。
穂先から中心なかごの端までザッと二尺五六寸、柄から抜いたまま蔀の隙間から射込いこんだもので、射込んだと思うと、槍の穂はひとりでに、元の欄間へスルスルと引上げられていくのです。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「だから変なんですよ、あの部屋は鼠一匹はいれやしません。どこか隙間すきまから、鉄砲なら射込いこめるかもしれないが、傷は間違いもなく突き傷だ。死骸のそばにはヒョロヒョロの細い短刀がころげているが、血も付いちゃいません」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)