はら)” の例文
はらみ女の死骸をまたがせられた。大きい蝙蝠こうもりに顔をなでられた。もうここらだろうと思うときに、半七の頬かむりの手拭をつかむ者があった。
それは、はらみ女が埋葬されてから、棺内で蘇生し、蘇生すると間もなく、腹の子供を生み落したというのだ。想像した丈けでも総毛立つではないか。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが形姿かたち威儀いぎならびなき一人の男が夜中にたちまち來ました。そこで互にでて結婚して住んでいるうちに、何程もないのにその孃子おとめはらみました。
「貴方と妾とは血肉を分けた兄妹じゃありませんか。それだのにこんな罪な子供をはらませるなんて……ペッペッ」
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
室羅伐スラヴァスチ城の大長者の妻がはらんだ日、形貌かお非常に光彩つやあり、産んだ女児がなかなかの美人で、生まるる日室内明照日光のごとく、したがって嘉声かせい城邑じょうゆうあまねかった。
あの女が噂のようにはらんでいたとすれば、そうして腹の子が彼女が地上に飛び下りたときに、蛙のようにヘシ潰れていたということが実際だとすると……かれはそう考えるとちらと
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
仏蘭西フランスの女は素人しらうとでさへはらむことが無いのに、なぜキキイがはらんだんだらう。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
答えて言うには「名も知らないりつぱな男が夜毎に來て住むほどに、自然しぜんはらみました」と言いました。
『根本説一切有部毘奈耶』にいわく、昔北方の販馬商客うまうり五百馬を駆って中天竺へ往く途上、一の牝馬が智馬の種をはらんだ。その日より他馬皆鳴かぬから病み付いた事と思いおった。
ぜんまい仕掛けか何かであろうと思いながら、長助は取られた袂を振り払ってゆく途端に、なにか人のような物を踏んだ。透かして見ると、路のまん中にはらみ女が横たわっているのであった。
そのはらめる事を怪みて、その女に問ひて曰はく、「いましはおのづからはらめり。ひこぢ無きにいかにかもはらめる」
はらみ女の腹をく。鬼女とも悪魔とも譬えようもない極悪ごくあく非道の罪業ざいごうをかさねて、それを日々の快楽けらくとしている。このままに捨て置いたら、万民は野に悲しんで世は暗黒の底に沈むばかりじゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うるはしき壯夫をとこの、その名も知らぬが、ごとに來りて住めるほどに、おのづからにはらみぬ」といひき。
この時にその后はらみましき。ここに天皇、その后の、懷姙みませるに忍へず、また愛重めぐみたまへることも、三年になりにければ、その軍を𢌞かへしてすむやけくも攻めたまはざりき。
「咲くや姫よ、一夜ではらんだと言うが、國の神の子ではないか」と仰せになつたから