女丈夫じょじょうふ)” の例文
女丈夫じょじょうふというほどでなくとも、こういう人生の荒浪を潜り抜けて来た女でなくては男の真の片腕とするには足りない」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
夫や友人たちを欺くにしても、あるいは自分が欺かれて苦しむにしても、すべて暗黙のうちにおいてだった。彼女らは人のうわさにたいしては女丈夫じょじょうふであった。
倶係震卦教の理解者たる、女丈夫じょじょうふ鳰鳥であればこそ、平気で歩くことが出来るのであった。時々熊や狼が彼女の行手を遮ったが、しかし彼女は恐れなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
多年古書を校勘して寝食を忘れていた抽斎も、ここに至ってやや風潮の化誘かゆうする所となった。それには当時産蓐さんじょくにいた女丈夫じょじょうふ五百いお啓沃けいよくあずかって力があったであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私はダージリンに居る時からこの女丈夫じょじょうふについては聞いて居ったこともあるし、その女の道案内をして行った男と私はダージリンでふとした事から親しくして居ました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
つまり極度にヒステリックな変態的女丈夫じょじょうふとでも形容されそうなタイプの女であったが、それだけに又、自分の身体からだが重い肺病にかかっても、亭主の彼に苦労をかけまいとして
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そうであろう、慶月院はそういう人だ、おれでさえあの女丈夫じょじょうふにはへこまされたことがある、うん、しかし甲斐にはやはり手紙をる、また地境の騒ぎが始まったのだ」
そしてその技巧のある夫人の中で、坂井の奥さんが女らしく怜悧れいりな方の代表者であるなら、この奥さんは女丈夫じょじょうふとか、賢夫人とか云われる方の代表者であろうと思った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)