奥詰おくづめ)” の例文
十一屋の隠居はこの話を日ごろ出入りする幕府奥詰おくづめの医者で喜多村瑞見きたむらずいけんという人から聞いたと半蔵らに言い添えて見せた。さらに言葉を継いで
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鉄三郎にも若党が附いて来たが、これは父が奥詰おくづめ医師になっているので、従者らしく附いて来たのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
元は幕府の奥詰おくづめのお医者様ですが、開港当時の函館はこだての方へ行って長いこと勤めていらっしゃるうちに、士分に取り立てられて、間もなく函館奉行の組頭でさ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二月にはいって、寛斎は江戸両国十一屋の隠居から思いがけない便たよりを受け取った。それには隠居が日ごろ出入りする幕府奥詰おくづめの医師を案内して、横浜見物に出向いて来るとある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっとも、瑞見はその出発が幕府奥詰おくづめの医師であり、本草ほんぞう学者であって、かならずしも西洋をのみ鼓吹こすいする人ではなかったが、後進で筆も立つ人たちが皆瑞見のような立場にあるのではない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)