大空たいくう)” の例文
無限上に徹する大空たいくうを鋳固めて、打てば音ある五尺のうちし集めたるを——シャロットの女は夜ごと日ごとに見る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
太陽をける為にあるのである。太陽は何の為にあるか。我々蛙の背中を乾かす為にあるのである。従つて、全大空たいくうは我々蛙の為にあるのではないか。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
武村兵曹たけむらへいそうわたくしとは、ぼうだつして下方したながめたが、かぜみなみからきたへと、輕氣球けいきゝゆうは、三千すうしやく大空たいくうを、次第しだい/\に大陸たいりくほうへと、やがて、れし朝日島あさひじま
なおすすみて、天文地質の論を聞けば、大空たいくう茫々ぼうぼう日月じつげつ星辰の運転に定則あるを知るべし。地皮の層々、幾千万年の天工に成りて、その物質の位置に順序のみだれざるを知るべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
元来吾輩の考によると大空たいくうは万物をおおうため大地は万物をせるために出来ている——いかに執拗しつような議論を好む人間でもこの事実を否定する訳には行くまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)