大文字だいもんじ)” の例文
始めてその部下から反抗てむかわれたのだ。憤懣の気を休めようと機械的にそばにあった夕刊を取り上げて見ると、大文字だいもんじの社会記事が目に付いた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
それでも合戦かっせんと云う日には、南無阿弥陀仏なむあみだぶつ大文字だいもんじに書いた紙の羽織はおり素肌すはだまとい、枝つきの竹をものに代え、右手めてに三尺五寸の太刀たちを抜き、左手ゆんでに赤紙のおうぎを開き
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御前おまえ川上、わしゃ川下で……」とせりを洗う門口かどぐちに、まゆをかくす手拭てぬぐいの重きを脱げば、「大文字だいもんじ」が見える。「松虫まつむし」も「鈴虫すずむし」も幾代いくよの春を苔蒸こけむして、うぐいすの鳴くべきやぶに、墓ばかりは残っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大文字だいもんじ近江あふみの空もたゞならね
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
大文字だいもんじなんか何うでも宜いよ。この連中は打棄って置いても好い加減物見高い上に、時間と空間の観念が全くないんだから、詰まらない入知恵は余りしないことだね。蟻の観音詣りじゃあるまいし、然う一々寄って歩いちゃ果しがないよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)