夜釣よづり)” の例文
「あの晩の夜釣よづりに限つて、船頭を歸してしまひ、一人でぎ出して行つたとか、誰にも逢はなかつたとか、まことにたよりない話で」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
御厩河岸おうまやがしわたしを越して彼方かなたよこたわる大川橋おおかわばしの橋間からは、遠い水上みなかみに散乱する夜釣よづりの船の篝火かがりびさえ数えられるほどになると
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
我がとも信州の人のかたりしは、同じ所の人千曲川ちくまかはへ夏の夜釣よづりゆきしに、人の三人もをるべきほどのをりよきいは水よりなかばいでたるあり、よき釣場つりばなりとてこれにのぼりてつりをたれてゐたりしに
一と月ばかり前、夜釣よづりに行つた歸り、白々明けの濱町河岸に船を着けたことがありました。
夜釣よづりに行かうかしら——と、棧橋の上に立つて潮の工合を見てゐると、丁度月が上つて來たんですつて。見るともなく見ると、足元の石垣の下に、半分水につかつて人間が落つこつてゐる。