しらせ)” の例文
いたましき禍ひのしらせをうくれば、その難いづれのところより襲ふとも、聞く者顏を曇らすごとく 六七—六九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
山車だしの出る日には、両先生は前夜より泊り込んでゐて、斥候ものみを派してしらせを待つた。距離が尚遠く、大鼓の響が未だ聞えぬに、斥候は帰つて、只今山車が出ましたと報ずる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あらかじめしらせのあったものと見えて山荘に留守居する年老いた夫婦の者が一行を迎え入れた。
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
温泉颪うんぜんおろしの寒風に徒らにふるえ乍ら、寛永十四年は暮れて行った。其頃幕府は局面の展開を促す為、新に老中松平伊豆守信綱を上使に命じ既に江戸を発せしめたとのしらせがなされた。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
故郷の朋友ほうゆう親籍しんせき兄弟けいてい、みなその安着のしらせを得て祝し、さらにかれが成功を語り合った。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
美少年の時春が不慮の変死を遂げたというしらせはわたしたち老少の女二人を愕かした。
美少年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ヤレ/\またしても面百くないしらせだ、ればとてこんないやな事を老母の耳に入れるでもなしと思い、何かつまらぬ口実こうじつつくって、折角楽しみにした上方かみがた見物もめにして、空しく東京にかえって来ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それも初めのしらせには姉の情人であつた
それも皆死んだ。後見伊達兵部少輔だてひやうぶせういうしらせを聞いて、熊田治兵衛と云ふものを浜屋敷に遣つて、医師河野かうの道円と其子三人とを殺させた。同時に膳番以下七八人の男と女中十人ばかりとも殺されたさうである。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)