唖者あしゃ)” の例文
四日めに助左衛門は意識を恢復かいふくした、しかし眼と唇が僅かに動くだけである。殆んど全身が不随のままで、ときどき唖者あしゃのような喉声のどこえをもらした。
落ち梅記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
最初の計画をかたく守って、唖者あしゃの如く口をつぐんだまま、遂に一言も物を云おうとはしませんでした。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
反絵は言葉を失った唖者あしゃのように、ただその口を動かしながら卑弥呼の顔を見守っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
もし、人間のふんしたお園が人形のお園と精密に同じ身ぶりをしたとしたら、それはたぶん唖者あしゃのように見えるか、せいぜいで、人形のまねをしている人間としか見えないであろう。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かつ子は唖者あしゃのように口が重く、話しかけても殆んど返辞をしないが、おたねは返辞を促したためしがない。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
口をきけば石灰粉がはいるため、唖者あしゃのように黙っているし、町の住民たちと交わることもない。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
口をきけば石灰粉がはいるため、唖者あしゃのように黙っているし、町の住民たちと交わることもない。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
どろんと濁った眸子ひとみ、緊りのなくなった、よだれで濡れて半ば開いている唇、そして時おり歯の間からもれる無意味な、唖者あしゃに特有の喉音こうおんなど、すべてが医者の言葉を裏付けているようにみえた。
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)