呼棄よびすて)” の例文
いまだかつて伯父は彼の事を「さん」づけにして呼んだことはなかったはずである。いつも三造、三造の呼棄よびすてであった。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
青年書生は勿論もちろん、家内の子供を取扱うにもその名を呼棄よびすてにすることは出来ない。かわりに政治社会の歴々とか何とかう人を見ても何ともない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お登和お登和と女房らしく呼棄よびすてになさるのは内々ないないその美人に野心があるのですね。そうにちがいありません。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
御三家ごさんけの事だから譜代ふだい大名の家来は大変にあがめて、仮初かりそめにも隠居などゝ呼棄よびすてにする者は一人ひとりもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
例えば私は少年の時から人を呼棄よびすてにしたことがない。車夫、馬丁ばてい人足にんそく小商人こあきんどごとき下等社会の者は別にして、いやしくも話の出来る人間らしい人に対して無礼な言葉を用いたことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)