周章しゅうしょう)” の例文
氏子周章しゅうしょう、百方工夫して基本金を積み存立を得たるも、また値上げ、また値上げとなり底止ていしするところを知らず。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
この時ぞく周章しゅうしょうの余り、有り合わせたる鉄瓶てつびんを春琴の頭上に投げ付けて去りしかば、雪をあざむ豊頬ほうきょうに熱湯の余沫よまつ飛び散りて口惜くちおしくも一点火傷やけどあととどめぬ。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するとさすがに大井の顔にも、またた周章しゅうしょうしたらしい気色けしきが漲った。けれども口調くちょうだけは相不変あいかわらず傲然と
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ついそういいかけて多計代は周章しゅうしょうした。大学にある越智の研究室へ行くことを、多計代はこれまで保からもかくしていたのだった。伸子からはもとより。——そういういきさつに拘泥せず
二つの庭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その子細は知らず、なにしろ青天の霹靂へきれきともいうべきこの出来事に対して、関東一円は動揺したが、とりわけて大久保と縁を組んでいる里見の家では、やみ夜に燈火ともしびをうしなったように周章しゅうしょう狼狽した。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)