うん)” の例文
独語ひとりごつやうに言ひて、満枝はいよいよ寄添ひつ。貫一はこらへかねて力任せにうんと曳けば、手は離れずして、女の体のみ倒れかかりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それとほとんど間髪を入れず、馬場屋敷の屋根棟から「うん」という気合の声がした。と、暗中に抛物線ほうぶつせんを描き、一筋の捕り縄が投げられた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
押借りもようといふたちで、丁度幕末の悪侍わるざむらひといふのだが、度胸だけはうんこたへたところのある始末にいかぬ奴だつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
大きな声で「うん」と叫んだら、その声は数里の外まで響いたという奇蹟を伝記者は附け加えているが、そんなことぐらい、生きる上の幸福をも、死後の安穏をも共々
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、忽ち剣の面、煌々こうこう明々陽に輝き、四方一面天地をこめて虹の如き光りほとばしると見るや「うん!」とばかりに悶絶して五右衛門は地上にたおれた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これために無けなしの懐裏ふところを百七十円ほどいためて、うんと参つた、かり小文学せうぶんがくをも硯友社けんいうしや機関きくわんかぞへると、それが第七期、これが第八期で、だ第九期なる者が有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うんと忍耐したのかも知れない。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
うん! うん!」
花は勁し (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「そもそも伊賀流の秘訣というは阿吽あうんの呼吸これ一つじゃ」老人は静かに説き出した。「うんと閉じれば姿が消え、と口を開けば姿が見える。吽の間の長い者こそ流儀の極意の体得たいとく者じゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うん! うん!」
花は勁し (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)