古襖ふるぶすま)” の例文
何百年かわからない古襖ふるぶすまの正面、板ののようなゆか背負しょって、大胡坐おおあぐらで控えたのは、何と、鳴子なるこわたし仁王立におうだちで越した抜群ばつぐんなその親仁おやじで。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
犬は彼等がとこへはいると、古襖ふるぶすま一重ひとえ隔てた向うに、何度も悲しそうな声を立てた。のみならずしまいにはそのふすまへ、がりがり前足の爪をかけた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、決然として身を少く開く時、主人の背後うしろ古襖ふるぶすま左右へ急に引除ひきのけられて
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「こんなこッちゃあかん。」と自からたしなめるがごとくつぶやいて、洋燈ランプを見て、再び机に向った時、が広いので灯も届かず、薄暗い古襖ふるぶすまの外にしわぶく声して
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろ古襖ふるぶすまが半ばいて、奥にも一つ見える小座敷に、また五壇の雛がある。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人も立ち会い、抱き起こし申す縮緬ちりめんが、氷でバリバリと音がしまして、古襖ふるぶすまから錦絵にしきえがすようで、この方が、お身体からだを裂く思いがしました。胸にまった血は暖かく流れましたのに。——
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)