めぐ)” の例文
めぐらせておるが、上のモは時として身幅に足らぬこともある。秋の境の涼しい朝夕には、キヌの上にさらに半臂はっぴを着る
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岩の軒からは私達をめぐって雨垂れが太い水晶簾を懸る。それを水呑に受けて渇いた喉を潤した。るいが旨い味だ。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
一髪の道が通じて、旅人が通つてゐるのが、ふり仰がれる、その上に青緑の山は高くそびえ、川は勾配を急に、杉の培養林のある山をめぐる、久根くねの銅山が見えて
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
翌朝フエデリゴは博士マレツチイと共に我客舍に來てうながし立て、打ち連れて馬車に上りぬ。車は拿破里ナポリの入江をめぐりて行くに、爽かなる朝風は海の面より吹き來れり。
日に閻浮提えんぶだい洲を三度めぐって疲れず王のおもうままになっていつもその意にかなうという(『正法念処経』二、『法集経』一)。『修行本起経』に紺馬宝は珠のたてがみを具うとあるもこれだ。
さくらもしだれの柳もめぐ
春と修羅 第二集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それをめぐって山の裾らしい朧ろの線が、雪田の縁に固く凍み付いて、上の方は有耶無耶に化けている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ぐ目の下に鴨緑おうりょく色の水を湛えた菅沼が手に届く程に近い。湖をめぐって鬱蒼たる針葉樹の梢が無数のほこを建てつらねたように、水際からひら地へ、ひら地から山腹へ、すくすくと立ち並んでいる。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)