凡人ぼんじん)” の例文
あるいは俺達のような凡人ぼんじんには考えも及ばないような深奥なる境地に到達してしまったのかもしれんぞ。いや、そうかもしれんのだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
けれども僕はしばしば言いしとおり、僕の同僚どうりょうたる凡人ぼんじんに対して話をするのであるから、よろしく非凡の人々はりょうとしてもらいたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かいしてすませるのは月並つきなみであって、そんな職業ができたのはずっとのちの話、最初凡人ぼんじん大衆の群を面白がらせ、是を何でもかでも土地のものとして
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ナポレオンはナポレオン、凡人ぼんじんは凡人さ。お互は子供を立派に育て上げる外に何も能がないようだ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
備えておられたのでござりましょうなかなか凡人ぼんじんには真似まねられぬことでござりますただ盲目になられてからはほかに楽しみがござりませぬので一層いっそう深くこの道へお這入はいりなされ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きゝ不屆ふとゞきなる奴輩やつばらなり其許そのもと若年にして今の働き勿々なか/\凡人ぼんじんの業とは思はれず天晴農民のせがれにはめづらしき者なり某しは豐後府内の浪人にて後藤ごとう五左衞門秀盛入道ひでもりにふだういひ無刀流の劔術を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なるほど、秀吉とやらは、信長の卒伍そつごから身を起して、いま播磨はりま一円を領し、やがては山陰山陽の二十余ヵ国をも併呑へいどんせんとするかの如き概ある者、おそらく凡人ぼんじんではありますまい。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊松先生きくまつせんせい貴下あなた凡人ぼんじんではらつしやらない。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
富士山ふじさん測量そくりょうはいまだ綿密めんみつに出来ていないごとく、大人物であればあるほど、その高さも大きさも容易ようい凡人ぼんじんの見分け得るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
凡人ぼんじんの悟りは偉人のそれと違う。ルーテルは友人の雷死らいしを眼前に見て、深い信仰に入った。私は轢死人の浅ましい姿に愛想を尽かして、多少持っていた信仰が怪しくなった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「とんでもない、わたしはくだらない凡人ぼんじんですよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大勢にて追取卷くんほぐれつ戰ふ有樣善か惡かは分らね共若者のはたら凡人ぼんじんならず天晴の手練かなと感じながらに見て居たるに今大勢おほぜいの雲助にたゝふせられ已に一命も危く見ゆるゆゑかの武士は立上り何はともあれ惜き若者見殺しにするもなさけなしいざたすけて呉んときたえ上たるてつ禪杖ぜんぢやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これもそのはずであって、むかしは堅苦かたくるしき文字をりて、聖人せいじんにも凡人ぼんじんにも共通なる考えを言い現すくせがあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし凡人ぼんじんは二年前のことを根に持っていた。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)