かじか)” の例文
笹村の寒さにかじかんだ体には、少しばかり飲んだ酒がじきにまわった。そして刺身や椀のなかを突ッつきちらしたが、どれも咽喉のどへ通らなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『いや、もう屋外そとは寒いの寒くないのツて、手も何もかじかんで了ふ——今夜のやうに酷烈きびしいことは今歳ことしになつて始めてだ。どうだ、君、是通りだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤くかじかんだ手で、濡雑巾ぬれぞうきんしぼりながら、例のごとく柔和やさしいにこやかな顔をして
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かじかんだ両手をぶるぶると唇へ押当てて、貧乏揺びんぼうゆるぎをせわしくしながら
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かじかむ手に竹箒を。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
昨日までかじかんだ恰好かっこうで着替えをもって歩いていた近所のチビが、いつの間にか一人前のねえさんになりすまし、あんなのがと思うようなしっちゃか面子めんこ
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あかかじかんだで、濡雜巾ぬれざふきんしぼりながら、れいごと柔和やさしいにこやかなかほをして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お作は机にひじを突いて、うっとりと広い新開の町をながめた。うすい冬の日は折々曇って、寂しい影が一体にわたっていた。かじかんだような人の姿が夢のように、往来ゆききしている。お作の目はうるんでいた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)