あかり)” の例文
提灯は径を歩かして、余は月のあかりを便りに今一度疑問の林に分け入った。株立になった雑木は皆落葉おちばして、林の中は月明つきあかりでほの白い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
喪服のにび色ではあるが濃淡の重なりのえんな源氏の姿が雪のあかりでよく見えるのを、寝ながらのぞいていた夫人はこの姿を見ることもまれな日になったらと思うと悲しかった。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
人のうめき声がしたかと思うたが、其は僻耳ひがみみであったかも知れぬ。父は熟睡じゅくすいして居るのであろう。其子の一人が今病室のあかりながめて、この深夜よふけに窓の下を徘徊して居るとは夢にも知らぬであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)