俎下駄まないたげた)” の例文
高木は雨外套レインコートの下に、じか半袖はんそでの薄い襯衣シャツを着て、変な半洋袴はんズボンから余ったすねを丸出しにして、黒足袋くろたび俎下駄まないたげたを引っかけていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白い眼はその重たくなっている所を、わざっと、じりじり見て、とうとう親指のあとが黒くついた俎下駄まないたげたの台までくだって行った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小肥こぶとりにふとったその男は双子木綿ふたこもめんの羽織着物に角帯かくおびめて俎下駄まないたげた穿いていたが、頭にはかさも帽子もかぶっていなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だれあはたゞしく門前もんぜんけて行く足音あしおとがした時、代助だいすけあたまなかには、大きな俎下駄まないたげたくうから、ぶらさがつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
誰かあわただしく門前をけて行く足音がした時、代助だいすけの頭の中には、大きな俎下駄まないたげたくうから、ぶら下っていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せんだって学校の小使が来て枝を一本切って行ったが、そのつぎに来た時は新らしい桐の俎下駄まないたげた穿いて、この間の枝でこしらえましたと、聞きもせんのに吹聴ふいちょうしていた。ずるい奴だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
甲野さんは粗柾あらまさ俎下駄まないたげたを脱いで座敷へ上がる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)