きつ)” の例文
にぎり向ふをきつと見詰たる手先にさは箸箱はしばこをばつかみながらに忌々いま/\しいと怒りの餘り打氣うつきもなくかたへ茫然ぼんやりすわりゐて獨言をば聞ゐたる和吉の天窓あたま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『小川さん!』と、女はきつと顔をあげた。其顔は眉毛一本動かなかつた。『私の様なもののことを然う言つて下さるのはそれや有難う御座いますけれど。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
取出し拔て行燈あんどう火影ほかげきつと鍔元より切先きつさきかけて打返し見れども見れどもくもりなき流石さすが業物わざもの切味と見惚て莞爾と打笑うちわらさやに納めて懷中ふところへ忍ばせ父の寢顏ねがほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と言つてる所へ、入口に人の訪るる気勢けはい。智恵子はきつと口を結んだ。俄かに動悸が強く打つ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きつと其下の方を見て居たが、何を思つてか、智恵子はいそがしく其急な坂をくだり初めた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)