亥年いどし)” の例文
それは、自分と同姓の、しかも自分とは一廻り下の同じ亥年いどしの二十六歳の、K刑務所に服役中の青年囚徒からの手紙だった。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
私の行ったのは、文久三年亥年いどしの三月十日の朝——安さんにれられて師匠に引き合わされました。安さんが「……これが、そのお話しの兼松の次男なんで……」
一々いちいち女の名と、亥年いどし午年うまどし、幾歳、幾歳、年齢とがりつけてございましてな、何時いつの世にか、諸国の婦人おんなたちが、こぞって、心願しんがんめたものでございましょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なお、過ぐる亥年いどしの三月から七月まで、将軍還御のおりのお供と諸役人が通行中に下された人馬賃銭の仕訳書上帳しわけかきあげちょうなるものを至急国もとから取り寄せて差し出せと言いつけた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私店けしいり軽焼の義は世上一流被為有あらせられ御座候とおり疱瘡はしか諸病症いみもの決して無御座ござなく候に付享和三亥年いどしはしか流行の節は御用込合こみあい順番札にて差上候儀は全く無類和かに製し上候故御先々様にてかるかるやきまたは水の泡の如く口中にて消候ゆゑあは