乾板かんぱん)” の例文
それとも或る種の誓詞せいしであろうか。写真の乾板かんぱんでもあろうか。でも以前にはおよそそんなものを、彼女が持っている様子はなかった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この方は一層不思議なもので、密封した写真乾板かんぱんに色々な字だの図形だのを、念力ねんりきで感光させるというのである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
朦朧とした写真の乾板かんぱん色の意識の板面に、真佐子の白い顔が大きく煙る眼だけをつけてぽっかり現れたり、金魚のひれだけが嬌艶きょうえんな黒斑を振り乱して宙に舞ったり
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし実際非常に怖い思いをしたので、そのときに眼底に宿った海岸と海水浴場の光景がそのままに記憶の乾板かんぱんに焼付けられたようになって今日まで残っているものと思われる。
海水浴 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それでも初めて現像して見て、結晶の像が出て来た時はとてもうれしくて、れた乾板かんぱんを持って同僚の友人の所へ見せに行ったのであるから、随分滑稽こっけいな話であった。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その中に器械を入れて来た木箱を適当に配置して現像装置だの、乾板かんぱんの出し入れの用意などをととのえる。それから食卓を一つ借り切って、これはそのまま実験台とする。