中腰ちゅうごし)” の例文
こんな中腰ちゅうごしの態度で、芝居を見物する原因は複雑のようですが、その五割乃至ないし七割は舞台で演ずる劇そのものに帰着するのかも知れません。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼんやり中腰ちゅうごしになってお由の白い顔を眺めていた土岐健助は、初めて愕然がくぜんと声をあげた。そして、おずおずとお由の硬張こわばった腕を持ったが、勿論もちろんみゃくは切れていた。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女はいつもびっくりした愁い顔で「はいはい」といい、中腰ちゅうごし駈足かけあしでその用を足そうと努める。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やぶれたガラスまどへ片手をつっこんだまま中腰ちゅうごしに立っているくまのすがたが、きゅうに明かるくらしだされた。にわかに火を見たくまの目は、ギロギロとくるいだしそうに光った。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
と、中腰ちゅうごしでいた身がまえをなおして、咲耶子さくやこの前にしずかにすわった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は、それをみると、思わず、車の中で、中腰ちゅうごしになりました。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
金蔵は中腰ちゅうごしになって、お豊の前で、あの時の物語をはじめます。
それが私に、中腰ちゅうごしと云ったような落ちつけない心持を引き起させるのも恐らく理の当然なのだろう。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は元々坐っていたのであるが、蠅を殺すときに中腰ちゅうごしになっていた。このままでいると、天井を突き破るおそれがあるので、私はハッとして頭を下げて、再びドカリと坐った。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
トニーは中腰ちゅうごしになって、うしろへ懐中電灯をてらしてみました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お延は中腰ちゅうごしのまま答えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)