上諏訪かみすわ)” の例文
ふもとか、上諏訪かみすわのあたりに足をとめて、城太郎の姿を探し、お通の消息を知らねばならぬと思うのであったが、なんとなく気が冴えない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信濃国しなののくにでは、上諏訪かみすわから和田峠を越えて、上田の善光寺に参った。越後国えちごのくにでは、高田を三日、今町を二日、柏崎かしわざき、長岡を一日、三条、新潟を四日で廻った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
銀子はここを通過して、上諏訪かみすわで宿を取ることにしてあったので、均平は独りで青嵐荘へと車を命じた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
六月二十四日はすでに上諏訪かみすわ御発輿ごはつよの電報の来るころである。その時になると、木曾谷山地の請願事件も、何もかも、この街道の空気の中にうずめ去られたようになった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
折ふしの大風雪をおかし、人馬も行き暮れるばかりの山また山の難旅行をたどって、ようやく、信州の上諏訪かみすわに着き、ただちに使いをもって
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはそうと、この母子おやこの多幸を祈って別れ、いの字ヶ原を去って、武蔵が上諏訪かみすわの辺りまで行き着いたかと思わるる頃
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また織田信忠は、上諏訪かみすわに進攻し、諏訪明神すわみょうじんそのほかの諸伽藍しょがらんを焼きたて、沿道の民家までも黒煙くろけむりとしながら、残兵を狩り立てつつ韮崎にらさき、甲府へ向って夜も日もなく急進して来るという。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに上諏訪かみすわから甲斐へ乱入——御被官ごひかんの一条右衛門大輔だいすけどの、清野美作せいのみまさかどの、朝日奈摂津あさひなせっつどの、山県やまがた三郎兵衛どの御子息など、戦うもくだるも、容赦ようしゃなくこれを殺し、斬っては路傍にけながら
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この月十一日、武田一門、勝頼以下、天目山てんもくざんに滅亡しおわんぬ——ということ。また、甲府占領接収のこと。信長公を始め味方の中軍は上諏訪かみすわに進駐、近く甲府御入城の予定——などの事柄であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)