上服うわぎ)” の例文
卓子に相対して、薬局の硝子窓がらすまど背後うしろに、かの白の上服うわぎを着たのと、いま一人洋服を着けた少年と、処方帳をずばと左右に繰広げ、ペン墨汁インキを含ませつつ控えたり。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
井戸端に出ると汗はダラダラと全身に流れて小倉こくら上服うわぎはさも水に浸したようである。彼はホット溜息ためいきらすと夏の夜風は軽く赤熱せきねつせる彼が顔をめた。彼の足は進まなかった。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
そこで用もなしに上服うわぎをとって外から見えないように壁にかけるとけろりとしていた。弁当の箸を折ってそれを釘のようにさし込んでいた訳である。私は思わず吹き出しそうなのをやっとこらえた。
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)