上方風かみがたふう)” の例文
壁は厚く、二階は低く、窓は深く、格子こうしはがっしりと造られていて、彼が京都の方で見て来た上方風かみがたふうな家屋の意匠が採り入れてある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの「御料人様ごりょうにんさん」と云う言葉にふさわしい上方風かみがたふうよめでもむかえて、彼もいよいよ島の内の旦那衆だんなしゅうになり切ることだろうと、想像していた次第であった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
上方風かみがたふう塗柄ぬりえ団扇うちわを持つてパタリパタリと通る姿を月影にすかし見るに、どうも飯島の娘おつゆのやうだから、新三郎は伸び上り、首を差延さしのべて向ふをると女も立ち止まり
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「岡田さんは五六年のうちにすっかり上方風かみがたふうになってしまったんですね」と母が調戯からかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
緋縮緬ひぢりめん長襦袢ながじゅばん繻子しゅすの帯をしどけなく締め、上方風かみがたふう塗柄ぬりえ団扇うちわを持って、ぱたり/\と通る姿を、月影にすかし見るに、うも飯島の娘お露のようだから、新三郎は伸びあが
上方風かみがたふうではなおさらなし、女ばかり常に見なれている新助の目にも、この娘の縹緻きりょうというものは、妙に不可思議な——難をかぞえながら、それでいて、強い蠱惑こわくにくるまれそうです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は上方風かみがたふうにベッタ人形といっているが、ベタン人形と同じものですよ。