鶴子は進が去年の暮あたりからある婦人雑誌に連載し出した小説を見た時、ふと六樹園ろくじゅえんの『飛弾匠物語ひだのたくみものがたり』の事を思出して、娘の時分源氏の講義を聞きに行った国学者の先生が
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)