ある若い男の話である、青函連絡船せいかんれんらくせんのデッキの上で、飛びかわす海猫うみねこの群れを見ていたら、その内の一羽が空中を飛行しながら片方の足でちょいちょいと頭の耳のへんを掻いていたというのである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)