多助も稼ぎ人なれば互に睦まじく、毎日休む処が極って居ります。それは四つ目の藤野屋杢左衞門ふじのやもくざえもんと申してお駕籠御用達しで、名字帯刀御免の分限ぶげんでござります。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すると先程より藤野屋杢左衞門ふじのやもくざえもんの娘お花と申して今年二十一歳に相成り、近辺で評判な別嬪の娘ですが、不思議な女で、御用達のお嬢様で有りながら絹布やわらかいものを着た事は有りません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)