だから平安時代にはまだ物語と歴史との概念は充分分化していないのである。その証拠は、『源氏物語』の調子で藤原道長ふじわらのみちながを中心に藤氏とうしの栄華の歴史が書かれると、それは『栄華物語』である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)