赤耀館の主人、松木亮二郎まつきりょうじろうは、思いの外、上品な、そして柔和な三十過ぎの青年紳士に見えた。しきりに、漆黒の髪が額に垂れ下るのを、細い手でかき上げるのが、なんとはなしに美しかった。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)