もっとも日本の女が外から見える処で、行水をつかうのは「御菊夫人マダムクリザンテエム」の著者を驚喜せしめた大事件であるが、自分は、わざわざ天下堂の屋根裏にのぼらずとも、山の手の垣根道では
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)